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月光旅社 gekkosugi.exblog.jp

レトロでアジアでシネマな日々


by sugi

やっと見ました『セデック・バレ』

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早くも6月最終ですね。
もう今年も半分終わったとは・・・。
今年は年が明けてからけっこうインドも含めアジア映画の
話題作公開が続いていて、作品を追っかけるうちに
半年が終わった感があります。

その中の1本、台湾映画『セデック・バレ』。
数年前に大阪アジアン映画祭で上映されたのですが
その時は見られず、どんな作品かも詳しくは
知らなかったのですが、今年一般公開が決まり、
4月から上映が始まり、見た人からの「良かった!」の
評価多数。なのに大阪のシネ・ヌーヴォ、七藝での上映に
行き損ねて、ようやく京都シネマでの上映に追いつきました。

四条烏丸の「COCON烏丸」というビルの3階にある
ミニシアター「京都シネマ」、初めて行って来ました。
駅から近くて便利。けっこう新しかったと思うのですが、
小さい劇場が2つあって、シンプルなつくりでキレイです。
学生の街京都という場所柄か、なんとなく
アカデミックな雰囲気も漂ってたりで、落ち着きます。
残念なのは、もともとオフィスビルで映画館の空間では
ないので天井が低くて画面が小さいこと。
あとは前の席との間が広くて快適で良かったのですが。
そんなに行くことはないでしょうが好きな感じの映画館でした。

さて『セデック・バレ』ですが、一部・二部の2本で
完結する物語です。最近の台湾映画では珍しい、
2本合わせて4時間半以上の歴史大作です。
日本統治時代の台湾の内陸の山間部「霧社」地域に住む
先住民セデック族が武装蜂起し日本人を多数殺害した
「霧社事件」を核に、先住民達と日本軍の攻防、
先住民達の生き様を通して、人とのつながりや、
家族愛、民族としての誇りなどを描いた濃い作品で、
人としての生き方や、考え方や価値観の違う者同士の
つきあい方など、色々考えさせられる1本でした。
何より「のんびり温和な台湾」のイメージでしたが
こんな激しい血も流れてたのかと、
色んな意味で衝撃的でした。熱かったです。
セデック族は元々戦った相手の首を狩る事によって
真の男と認められるという掟と習慣の中で生きていた
民族だそうです。

緑の生い茂る中を生き生きと裸足で飛び回り、
疾走するセデック族達。
とにかく、そのアクションのスピード感と躍動感、
身体をはった戦闘シーンなどパワー溢れる映像に圧倒されました。
大勢の日本軍に300人ほどで対抗したセデック族ですが、
そら、こんな人らと山の中で戦ったら勝ち目ないでしょ。
実際、随分日本軍は苦しめられて、最後には
毒ガス弾まで持ち出して対抗する始末。
先住民を演じる俳優はほとんどが先住民出身の
演技初心者で特に主役のセデック族頭目を演じた
リン・チンタイはタイヤル族の牧師さんだそう。
そんな風には思えない存在感と達者な演技。
若者達もなかなか男前でした。
ビビアン・スーも先住民出身とのことで出演していました。

実際に起きた「霧社事件」というのは日本人を女も子供も
関係なく言わば皆殺しにしたという事件で、
殺された人達はもちろん気の毒だと思いますが、
他人の土地に土足で踏み込んで日本文化を押し付けての
勝手な振る舞い。
先住民達が我慢に我慢を重ね、決死の覚悟をもって
武装蜂起したことからも、
どう見てもこの様な事態になってもしかたないと感じました。

しかし、この映画は「日本人はヒドイ!先住民は正しい!」
という単純な視点ではない所に「今」を感じました。
日本人や(本土から来た)漢民族との関わりも
悪いモノだけではなかった部分もあったかと思われるし、
この史実から何かを感じて、今を生きる人達は
きっと、もっとかしこい選択をしてより良い共存の仕方で
平和を大事にして生きて行く事ができるんじゃないか
という希望も込められている気もしました。

台湾ではこの様な映画は実現不可能だし、
人が入らないと言われながらも、遠回りして、
ようやく完成させたウェイ・ダーション監督の気合いと
思いが入りまくった映画でした。
製作にジョン・ウー、美術は日本の種田陽平、
アクションは韓国のチームと、アジアの力が結集。
7月5日まで上映しています。

by sugisugi26 | 2013-06-29 23:58 | アジア映画 | Comments(0)