バイ・シュエ監督が『来るべき才能賞』を受賞されました。
それも納得の、新鮮さを感じる1本でした。
監督にとって初めての長編だそうですが、
とてもよく練られ、見応えがある作品で、
かつ新しく、若い感覚も感じられてとても印象に残りました。
舞台は香港と深圳。
深圳に母親と住みながら、毎日国境を超えて香港の学校に通う女子高生のペイペイは
お金持ちの友人と日本へ遊びに行くために、
バイトや同級生に物を売ったりしてお金を貯めるのに必死な中、
香港から中国へスマートフォンを運ぶ仕事に手を出してしまい、
組織の中で働く事になる。
危うい年頃の若者が簡単に犯罪に手を染めてしまう原因は
結局格差社会と孤独なのだと感じました。
しっかり者のペイペイに対し、
母親は誰かに頼らなければ生きていけない様なタイプの女性で、
香港に住む父親には本来の家族がいる様子。
たまに父親に会いに行き、お小遣いをもらったり、
食事を食べさせてもらったりしているが家族の温かさはあまり感じられず。
香港と中国を行き来しながら、
恵まれない境遇の中でも、都会の片隅で翻弄されながら
自分を追い求めている若者たちの姿にハラハラドキドキしながらも
引き込まれました。
犯罪組織の擬似家族の様な雰囲気の中で居場所を見つけ、
幸せを感じている様に見えたペイペイ。
自分達だけで何か大きな事ができる様な気になるが
結局は大人達の手の内で利用された事を思い知り
熱が覚めた様に本来の自分に戻っていくしかない姿が切なく、
でも少しホッとしました。
描き方や映像もクールなトーンで、音楽も印象的でした。
エンディングで気になった中国人歌手タン・ウェイウェイが歌うテーマ曲。
映画の余韻とともに心に残りました。